体育館にて(装備確認・携帯食配付)
6:00 学校スタート
チェックポイントにて
学校ゴール (1)
学校ゴール (2)

文責 強歩担当責任者
高等部校長 山口豊幸

 本校最大の学校行事、恒例の「強歩」が10月10日、実施されました。本来は「100KM強歩」ですが、新型コロナウイルス感染症の感染予防措置として、教職員のみの見守りによる開催とし、歩行の安全確保としても「50KM」が最適と考えての縮小開催となりました。昨年は台風19号の直撃予報により中止を余儀なくされ、今年も感染症で中止となれば、行事運営の伝承自体も危ぶまれる状況でした。本来は、父母会、後援会、OBG、さらには地元住民の皆様方の絶大なるご協力のもと、過酷な「100KM」の道のりを、子どもたちは必死にひたすら歩き通す、開善学校「第二の入学式」とも称される行事です。今回、歩く距離は半減しましたが、むしろ、非常に過酷な「強歩」であったことは間違いありません。子供たちの「前進力」に脱帽です。
 10日午前6時。気温10度。冷たい雨が夜明け前の暗がりに音だけを打っていました。木曜日から断続的に降る雨。台風14号の関東沿岸最接近の予報が消えない中でのスタートでした。雨合羽上下にマウスシールド、携帯食やドリンクを詰め込んだリュック。合羽のフードを冠ると視界も邪魔され蒸れもする。保温用の手袋はむしろ保冷剤と化す。吐く息と雨でマウスシールドは水滴だらけ。防水スプレーを施した運動靴は、連続する水溜まりで全く意味をなさない。すぐに足裏はふやけて皮が剥がれやすくなる。日が昇ったはずでも一向にお天道様は顔を見せず、降りしきる雨は、終日止む気配も見せない・・・。
 前日に、途中での歩行停止措置を計画していました。雨、急な冷え込み、新型ウイルス、台風接近の恐れ、なにひとつ好条件が出てきません。中止の判断は3つでした。第1チェックポイント「六合支所」(17KM地点)午前11時、第3チェックポイント(折り返し地点)「長野原町諏訪神社」(26KM地点)午後1時時点、そして、復路「六合支所」午後2時時点です。しかし、午前11時にはすでに復路を「家路」に向かう子が続々と現れていました。最後まで子どもたちを歩かせよう、やり切りたいと思っている子供たちの意のままに、中止の選択は早々に放擲しました。みな、真剣で、必死に歩いていたからです。汗で体はびしょぬれです。それどころか、走って学校にいち早く「帰ろう」とする子も、ひとりふたりではありません。巡回しながら「寒くないか?」と問うたびに、「大丈夫です、暑いくらいです」と即答してそのまま前を向く子ら。担当責任者のみならず、教職員は祈るのみ。「強歩」で「がんばれ!」は禁句です。みんな、気を付けてゴールしてくれ、行けるところまで行け!と念じていました。
 もしあの時、どの時点であっても、歩行中止していたら、子どもたちにきつく叱られた私がいたでしょう。
 午後6時。すべての参加生徒が山の家に戻りました。事故なく怪我無く、無事、寮に戻りました。結局雨は止みませんでしたが、ひたすら前を向いて歩むどの子の顔も態度も、大人は敵わないことを強く強く、実感させてくれました。